
岐阜県関市郊外にあるマンションの管理組合から
宅配ボックス修理の依頼をいただき、7月中旬から
続く猛暑の中、まず新幹線で名古屋へ向かいます。
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名古屋駅で在来線に乗り換え
さらに岐阜へ向かいます。
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久しぶりの岐阜駅です。現役の
頃、仕事できたことがあります。
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駅構内の各所に暑さ対策の
ミスト散布装置が稼働しています。
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駅の外に出ると強烈な陽射しに見舞われ
ます。ここからバスで関市へ向かいます。
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マンションの最寄り停留所まで40分以上、
路線バスにこれだけ乗車したことはありません。
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停留所からマンションは1km弱。炎天下で
ツールボックスを下げての徒歩は苦行です。
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目的のマンションが見えてきました。あと300mくらい
ですが、一息入れようにも日影がまるでありません。
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修理作業よりも現地までの移動に
大半の体力を消耗してしまいます。
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ふらふらしながらエントランスに到着。
陽が入らないだけで天国の涼しさです。
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管理人さんに案内され挑戦相手の前へ。外側の
エントランスを回り込んだスペースに宅配ボックスが
あります。かつてのナショナル(松下電工)製で、
ポストなしのMR型、優に20年を超える製品です。
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手前郵便受けの奥に設置され、大4台と
中4台の計8台で構成されるボックスです。
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修理作業に合わせ、利用を見合わ
せる掲示が張り出されています。
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内側エントランスを中に進むと、ちょうど
反対が荷物の取り出し側になっています。
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マンションの建設時に、ホールの壁面に大きな開口部を設け設置
されています。事前に伺っておりましたが製造元では完全に修理
不能、丸ごと新規入れ替えでしか対応しないそうです。当然莫大な
費用がかかることになり、管理組合の皆さんは頭を抱えています。
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故障したボックスは表示器にエラーが出ます。主に
E-08、稀にE-05が表示されるそうですが、
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実際に確認するとE-06が
表示されているものもあります。
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製品の取扱説明書でエラーの内容を調べます。E-05、
E-06、E-08のいずれも電気錠の動作不良を示して
います。制御回路から解錠・施錠信号送られても電気錠が
動作しないということは、電気錠の動作機構に問題がある、
あるいは動作後に検知がされていないと解釈することが
できます。動作機構は何らかのアクチュエータ、検知には
おそらくマイクロスイッチあたりが使われているでしょう。
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全8ボックスのうち4台故障とお聞きして
いましたが、実際には5台が故障です。
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ボックスのドアを開け、ロックユニットが組み
込まれていると思われるカバーを外します。
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ドアキャッチの後方にユニットが収まって
いるようです。配線の引き出しが見えます。
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ドアキャッチの上下を固定
しているネジを緩めます。
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ロックユニットを引き出します。ほぼ同様の
ユニットが、表の配達側にも組み込まれています。
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ユニットの後方に制御回路からの
配線が引き込まれています。
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引き出したロックユニットの
上カバーを開けます。
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ユニット自体は機械的に構成された
機構で電子部品は含まれていません。
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修理としてできること(すべきこと)は、機構各部品の動作状態の
確認です。可動部に固着がないか、逆に固定部に緩みがないか
です。ソレノイドプランジャーの固着が少なくありません。それと
2個使われているマイクロスイッチに、接触不良がないかです。
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機構部品への潤滑処理、およびマイクロスイッチの接点回復に
より、中サイズ2台の故障が解消しエラー表示が出ていません。
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日が暮れてしまいエントランス内での作業が
難しくなったため、作業を中断し宿に向かいます。
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しかし、土地勘がなくタクシーも掴まらないので
暗闇と猛暑の中、宿まで徒歩で移動することに・・
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翌日、残りを片付けるべくタクシーで
マンションに向かいます。しかし、
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昨日と同様のロックユニット内の修理では機能が
回復しません。制御基板も取り出して点検します。
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途方もない時間をかけて信号を追いかけますが、工房を遠く
離れた現場では装備が足りません。ようやく判明したことは、
いくつかのユニットで施錠・解錠信号が出ているのに機構が
作動しない・・原因はソレノイドの断線でした。交換部品を
調達するには少なくとも名古屋まで戻らなければならず、
仮にパーツショップが見つかったとしても適合する部品が
入手できるか分かりません・・、完全にタイムアウトです。
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日が暮れかかり作業が難しくなる頃、故障していた大サイズ
2台のうち1台が回復。しかし、昨日修理した中サイズの1台に
再びエラー(E-02)が表示され、気が付くと新たに1台に
E-05のエラー表示が・・・結果は最悪であり敗北です。
一縷の望みを託し、管理組合の皆様の一縷の望みを背負い、
猛暑の中を2日間を戦いましたが・・、引き際も肝心です。
後日、ご依頼主には以下の作業報告を添えてお詫び状を
お送りしました。作業報告と本記事の内容に齟齬があるかも
知れませんが、記憶違いによるものですのでご容赦下さい。
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1.ボックス8台の作業開始前現状について、○○開発○○様より
A・C・Gの3台が動作とお聞きしましたが、実際にはA・GのみでCはエラーが出て動作不良でした。
2.ひと通り点検したところ、E・Fの2台は受け取り側のドアが何としても開かず、そもそも修理の対象とすることができませんでした。
3.B・C・D・Hの4台についてエラーコードから推測される施錠機構の不具合を徹底的に調整した結果、CとHの2台が動作を
回復しました。Bは以前に施錠ユニットに手が入れられた形跡があり、ユニット内のロック部品が付いていませんでした。
4.ボックス容量の小さいDからロック部品を取り出しBに組み込んでみましたが、それでも正常動作には至りませんでした。
5.Dの施錠ユニットを詳しく調べたところ、施錠・解錠用のアクチュエータ(ソレノイド:電磁石)が動作していないことが分かりました。コイルが断線しているようで導通がなく、よく見ると部品の表面が焼け焦げていました。長い期間中途半端な動作が続いたことで、過電流により損傷したものと考えられます。
6.ドアを開けることのできないE・Fも、アクチュエータの損傷が考えられます。またBについてもアクチュエータの動作不良が考えられます。
7.この時点でA・C・G・Hが動作するようになりましたが、今後に備えてさらに調整を加えていたところ、突然Gが作動しなく
なりました。E・Fと同じ状況で、ドアを開けることができなくなり、新たにアクチュエータが損傷した可能性があります。
8.アクチュエータは汎用部品により代替可能ですので、B・E・
F・Gは部品交換により修復できる可能性があります。ロック部品を流用してしまったDも、同等部品を自製することで修理可能です。
9.ドアの開かないE・F・Gも、いくつかの工具を用意すれば開けることができます。残念ながら今回持参した工具セットでは対応できませんでした。
10.アクチュエータ、ロック部品とも用意することは可能で、今後再修理の機会があれば回復できるかも知れません。しかし、貴マンションまで数往復するか、施錠ユニットおよび関連部品を
取り外して工房に運び込む等の必要があり現実的とは言えません。
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