
昨年12月にアップしたマンション宅配ボックス修理リベンジを
ご覧いただけましたでしょうか。記事の最後で、一昨年2023年に
岐阜県関市で同じく宅配ボックスの修理に挑み、惨敗に終わった
ことを白状しています。そこにあるリンクはしばらくダミーでしたが、
その失敗事例をようやくまとめ猛暑の岐阜で宅配ボックスに敗北す
のタイトルでTopcs26にこっそり追加しました。戦績が決して振る
わないのにその後も修理のご依頼が続きます。今回は兵庫県
西宮市内のマンションへ出向きます。勝算は半々・・でしょうか。
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TXで都内まで、新幹線で新大阪まで、
JR在来線を乗り継ぎ西宮へ移動します。
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朝7時過ぎにに守谷を出発しても
到着時にはお昼を過ぎます。
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西宮駅から路線バスで10分、バス停から
徒歩500mくらいですが、この上り坂です。
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この急坂をツールボックスを
提げて登り切ります、堪えます。
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瀟洒なマンションの素敵な
エントランスを中に入ると、
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回り込んだところに宅配ボックスが
設置されています。奥は郵便受けです。
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修理作業日に合わせて、管理会社の方が使用禁止の
お知らせを掲示して下さっています。中央に操作パネルが
あり、どのボックスを使用するにもこのパネルを使用します。
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2個の表示器に操作の案内や
入力結果が表示されます。
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部屋番号や暗証番号を入力するには
このテンキーパネルを使用しますが、
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「1」・「2」・「3」が正しく反応しません。
「1」と「3」は押しても全く無反応。
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「2」を押すと「ピッ」という反応音が聞こえ
ますが、表示器には「1」と表示されます。
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テンキーの接触不良か・・程度に考え、
お借りした鍵で制御部のドアを開けます。
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操作パネルが取り付けられたドアの
内側です。4枚の回路基板があります。
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基板に手を付ける前に妙な配線に気づきます。
ボックス拡張時の予備コードかと思いますが、
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無残に引きちぎられたような状態で、芯線が
剥き出しです。切り口を整えて養生しておきます。
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テンキーパネルの裏側にある基板を外します。
タクトキーが使われていると劣化の可能性が大です。
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基板間はフラットリボンケーブルで接続され、
基板実装コネクタは信頼性の高いJAE製です。
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テンキーはやはりタクトスイッチで構成され、
専用のキートップが装着されています。
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真っ先に、タクトスイッチを1個ずつ押して導通を調べ
ます。が、「1」・「2」・「3」も含めて問題ありません。
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可能性が低いと分かっていますが
コネクタ部での接触も疑います。
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コネクタごとケーブルを抜いた状態で
接点部にケミカルを入れます。
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組み戻してもキーの動作不良はそのまま
です。確認用にキートップに数字を書き込み、
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キーをセンシングするマトリクス配線に
従い、導通を丁寧に調べて行きます。
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各タクトスイッチ単体ではなく、マトリクス配線を経由した
行と列(カラムとライン)でも導通が確認できます。テンキーを
出るところまでは問題がありません。もう1枚の回路基板も
入力信号を中継しているだけで、テンキーの操作は間違いなく
メイン基板に到達しています。嫌な予感が立ち込めてきます。
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エントランスを出て配達側も点検します。
受け取り側とほぼ同じ構造をしています。
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ただし、こちら側は「1」・「2」・「3」いずれも
無反応です。鍵を使用してドアを開けます。
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ドアの内側に取り付けられている回路
基板は、受け取り側と全く同じ構成です。
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そしてボックス内に大きなメイン基板が収められています。
配達・受取側ともケーブルは全てこの基板に集約されます。
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ここで一計を案じます。配達側・受け取り側ともメイン基板への
ケーブル配線はほぼ同じで、コネクタも同ピン数の同型が使用
されています。試しに配達側と受け取り側のケーブルを入れ
替えて差してみます。その結果は、何と「1」・「2」・「3」キーの
反応が配達側と受け取り側とも元のままです。つまり不具合の
原因は、テンキーなどドア内側にある基板群ではなく、メイン
基板自体にあるものと考えられます。メイン基板は1個のPICを
中心に構成され、テンキーの入力や表示器への出力はPICの
I/O端子を介してやり取りされます。ここまでの状況からして
特定のI/O端子、すなわち「1」・「2」・「3」をスキャンする
PICポートに不具合があるのではないかと推測されます。
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1.宅配ボックス操作に関する不具合を確認しました。受取側操作では、部屋番号を押す段階でテンキーの「1」が反応せず、「2」は反応しますが1と表示されアンサーバック音が歪んでいます。「3」も反応しません。届け側操作では、「1」、「2」、「3」のキーがいずれも反応しません。
2.テンキー基板を取り外し、内部タクトスイッチの導通を調べましたがいずれも正常でした。縦列・横列に配置されたマトリクスの全てで、キー操作時に導通が確認できました。
3.受取操作・届け操作のスイッチ基板を取り外しコネクタの接触を確認しました。念のためコネクタ基板端子のソルダー部を再ハンダしました。
4.ドア側基板とメイン基板を接続するケーブルを確認し、メイン基板側のコネクタ端子ソルダー部を再ハンダしました。ここまでの作業で不具合は何ら解消せず、スイッチやコネクタの接触不良の可能性がほぼなくなりました。
5.届け側と受取側でドア内側の基板セットがほぼ同じなので、基板のセットを互いに入れ替えてみました。その結果、「1」、「2」、「3」キーに対する反応が届け側と受取側で逆となり、不具合の原因がメイン基板にあることが判明しました。
6.メイン基板はPIC(専用にプログラムされたコンピュータ)を中心に構成されており、一連の不具合はほぼPICの誤動作によるものと推測されます。PICは完全に故障しているわけではなく、一部の入出力ポートが破損しキー入力が正常に機能しないものと考えられます。
7.PICを交換することは可能ですが、宅配ボックス制御用の専用プログラムが書き込まれているため、交換するだけでは機能しません(PIC表面のシールにファームウェアのバージョンが印字されています)。
8.PICの周囲に多くの論理ICが取り付けられており、どれかが破損したり配線に不具合がある可能性もゼロではありません。しかしソリッドステート化された基板内でそのような故障が起こる可能性は小さく、また見つけ出すことは困難です。
9.以上の状況から、当工房による修理は困難もしくは不可能と判断致しました。おそらく製造元でも修理ではなく、メイン基板の交換あるいはシステムを構成する全基板を交換することになると思われます。
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もし時間をかけて回復できる状況であれば、駅前まで戻り
どこかに1泊して翌日も作業する計画でしたが・・。PICの
ポートが正常に機能してないとすると、それはお手上げです。
同型のPICに交換することは簡単ですが、内部に書き込ま
れているファームウェアを復元することが絶対に不可能です。
今回も修理に成功できず空しく悔しい限りですが、依頼主の
ご期待に添うことができず只々申し訳なく思います。上記は
工房に戻ってから、ご依頼主およびマンションの管理会社
あてにお送りした作業報告です。幸いなことに宅配ボックス
製造元が補修部品(基板のセット)を在庫しているそうで、
莫大な費用がかかりますが、一応修理可能だそうです。
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